溺愛コンプレックス

ああ、カナメのにおいだ。

抱き締められた瞬間、お日さまみたいなにおいがして、私はほっとした。

「カナメ…帰ってきてよ…!」

私はカナメの背中を握り締めた。

「ツバキ…」

「カナメがいないと…私…」

そう言って、私は言葉が詰まった。

カナメがいないと、何なの?
私にとって、カナメは何?
本当に、ただの弟だと思ってるの…?

自分が分からなくなってしまった。


「俺がいないと…?」

カナメも少し驚いた顔をしている。

「……」

私は何を言おうとしてるんだろう…。

その先は、何も言えなかった。