溺愛コンプレックス



カナメはしばらくだまっていた。

私がおそるおそる目を開けると、口元を右手で押さえて目をつむっていた。
顔から耳まで赤くして。


「カナメ…怒ってる…?ごめん、ごめんね?こっちのお弁当食べて、ほら、お母さんが作ったから!」

「…なんでだよ」

カナメは低い声で言った。

え?

「なんで人が自分の感情を抑えようとしてるときに…」

「カナメ…!?」

カナメは私の腕を?んだ。

「俺、ツバキが好きだって言ったよね?でもツバキはそうじゃない。なのになんで、こんな…」

カナメが私の指を見た。
包丁での切り傷や、フライパンに触れてしまってやけどしたから、ばんそうこうだらけ。
眉根を寄せて、目を細める。

「なんで、こんな期待させることするんだよ……!!」

カナメは、私を強く抱き締めた。
肩や腰に手が食い込みそうなほど、力いっぱい…。