溺愛コンプレックス



カナメがお弁当を開けて、目を丸めた。

「…なにこれ」

私用のお弁当は、卵焼きやタコさんソーセージなど可愛らしい色とりどりのおかずが並んでいる。

…でも、カナメのお弁当は…

卵焼きらしき物体は茶色く焦げてるし、おにぎりの形もいびつ。唯一原形をとどめているのはミニトマトくらいだ。

そう、私が初めて作ったお弁当。

やっぱり、びっくりしてる。
ダメだ、よけい怒らせちゃう。

「…ごめん、やっぱこれはダメだよね。私のと交換しよ…!!」

「まさか…」

カナメが驚いた顔で私を見る。

「ツバキが作ったのか…?」

私は顔を真っ赤にしてうつむいた。
恥ずかしい。なんでこんなこともできないの…。
初めて挑戦したお弁当作り。
結果はさんざんだったけど、カナメのために何かしたかったの。

私は泣きそうになった目をぎゅっとつむった。

「ごめん…、私、何やってもダメで…」