溺愛コンプレックス



「何で先輩が分かるんですか?」



私の問いに、レン先輩はうつむいた。


「…見てたからに、決まってるだろ」

見てた…?


「君をね。林間学校一緒の班になったときから…ずっと見ていた」


レン先輩は顔を赤くして、自分の手元を見つめていた。

それって…


「だから君の弟の存在が気に入らなかった。向こうも気付いてたみたいだけどな…」



好きってこと…?



「俺はひきょうかな。君が弱っているときに、こんなこと言うなんて」


私を真っ直ぐ見つめる。その視線を私は知ってる。
カナメが向けてきた、あの目と同じ。



私は黙って首を振る。


「精神的に頼りないけど、明るくて穏やかな笑顔を絶やさない…君のそういう振る舞いに、いつも目を奪われた」


「レン先輩…あの…私」


「今、少しでも君の気持ちに、俺が入り込む隙間があるなら、考えてほしい」


レン先輩の大きな手が、私の手に触れた。


「今度は、俺に君を守らせてくれ」

手が熱い。
涼しい目元から送られる熱い視線に、目眩を覚えた。


鼓動が速くなっているのが自分でも分かる。