溺愛コンプレックス

私はベッドから起き上がって、保健室を出ようとした。

「どこに行く気だ?」


レン先輩を振り返ることなく、小さく答えた。

「…早退します。もう今日は何も考えられない…」

待て、と私の腕をつかむと、乱暴にベッドに座らせた。

「そんなフラフラなヤツをほっとけるか。そこで待ってろ、かばん取ってきてやるから」


「…」


私は黙って言うとおりにした。


戻ってきたレン先輩は、かばんを2つ抱えていた。


「俺も帰るよ。送ってやる」


無愛想な言い方だけど、彼の優しさは胸に滲みた。