溺愛コンプレックス


「ああ、王子様の登場か」


レン先輩は少し笑うように言った。


「…ケンカ売ってるんですか…?」


カナメは聞いたことのない怒りのこもった声で答えた。

「…そういえば、お前のお姫様、昨日一人で帰ってたぞ。いいのか?」


「あんたには関係ない…」


私の話をしてる…。どうしよう、こんな立ち聞きみたいになちゃって…
心臓がバクバク音を立てている。



「大体、気持ち悪いよな。高校生にもなって姉とベッタリなんて」


「…俺は」


レン先輩の挑発するような言い方に、カナメはさらに怒りのこもった声で答えた。


「ツバキを姉と思ったことなんか、一度もない…」



ドクン…


心臓が音を立てて壊れていく気がした…



遠ざかる足音に、レン先輩が声をかける。


「待て!それはどういう―…」


言い終わる前に、保健室のドアが閉まった。


苦しい…苦しいよ…カナメ…―!