溺愛コンプレックス

朝になっても、カナメは私を起こしにきてくれなかった。

結局眠れないままだったんだけど。

私はパジャマのまま自分の部屋を出て、階段を降りた。

キッチンから話し声が聞こえる。

お母さんとカナメだった。


「―分かったわ。おばあちゃんには私から言っておくから、向こうで少し頭を冷やしなさい…」

「ああ。もう今日から移るから…後のこと、よろしく」



何の話を…してるの…?



お母さんが私に気付いた。


「あら、ツバキ。おはよう」


「…おはよ、ツバキ」


カナメも微笑む。



ねえ、何の話?
二人で何をコソコソ話してたの?


私は黙って怪訝な顔をしてみせた。