溺愛コンプレックス


いつの間にか眠っていて、目を覚ました時にはもう午後10時を回っていた。

さすがにお腹が減っていて、台所で何か食べ物を発掘しようと、のそのそと着替えてからドアの鍵を開けた。


ドアの前には、カナメが静かに立っていた。
ものすごい剣幕で怒っている。


「ずっと…そこにいたの…?」


「…いたよ?誰かさんはイビキかいて寝てたみたいだけど」


まずい。カナメの皮肉は、怒りが頂点に達している証拠だ。


カナメは私を部屋に押し戻し、自分も入って後ろ手でドアの鍵をかけた。


「説明してもらおうかな、今日俺を避けてた理由を」


私は怖くなって逃げようとドアの鍵に手をかけた。


その瞬間、ふわっと身体が浮いてベッドに倒された。

「逃がさない」


カナメの目が真剣だった。両手が押さえ付けられてびくとも動かない。
すごい力。いつの間にこんな――


「ちゃんと話して。俺たち隠し事なんかなかっただろ?」


今度は悲しそうな目をする。


私も悲しくなって、いつの間にか涙が出てきた。


「だって…見ちゃったんだもん」


すすり泣く私に驚いて、カナメは掴んでいた手を放した。


「見たって、何を?」


「今日、女の子に告白されてたでしょ…?」


「!!」


カナメは私から目をそらした。


「見てたのか…」