赤月が嘲笑って
黒猫が嘶いて
君の瞳が潤むのが
手にとるようにわかるんだ。


世界が汚れていく。


十字架が刺さって
動けない紫蝶の如く
足枷をつけられて
逃げられない白馬の如く
神に祈り乞えばいい。

そうすれば
お前は救われるのだ。
お前もこの世界も。


紫蝶の羽は抜け落ち
白馬の足は赤く爛れ
何もかもが崩れていく世界。

お前までは傷つけたくないと
そう思うからこその忠告で…

でもそう思っていながらも
心のどこかでは
お前の血が見たいと
お前の涙が見たいと
そう思ってしまうのだ。

愛しいお前のため
愛しいお前だから
俺はどうすればいい?


お前を閉じ込めてしまいたい
お前を離したくない
お前を縛ってしまいたい。

そんな考えを拭い去りたい。
俺には無理なのか?
俺には…


俺の頬をつたう
紅い雫は何だろう。
お前の身体を濡らす
紅い雫は何だろう。

紫蝶が寂しげに震える。
風にのり 舞い落ちる。

紫蝶がお前の頬に止まれば
色を失ったお前の肌に
一瞬の煌めきを与える。

それこそが
この世で最も美しいもの。


†+――――――――+†

そうか……
お前の血が俺を濡らしたんだ。

†+――――――――+†