晶は、少女のなすがままに歩かされていた。日は完全に沈み、人影の少なくなった道を、先程会ったばかりの美少女と歩いている・・・・普通の状況なら、晶でも胸躍ったであろうが、今の晶はその代わりに混乱を味わっていた。
 すると、さっきまで無言であった少女が口を開く。

「・・・止まれ」

 晶が言われたとおりに止まると、そこには大きな日本屋敷があった。
 晶の目が暫くそれに奪われていると、いつの間にか少女の姿が消えていた。

「あっあれ?どこに行ったんだ!?」

 晶が探していると・・・

「何してる・・・早く来ないか」

 少女がいつの間にか屋敷から顔を出し、晶を呆れ顔で見ていた。
 晶が渋々屋敷の中に入ると、人気が全く感じられない。晶はいきなり、怖くなった。

(良く考えれば、何でここまでついてきたんだ?『命に関わる』って言っていたけど、さっきの化け物を倒した、名前さえも知らないこの少女と居る方が危ないんじゃないのか?
 もしかしたら、人目のつかないここで、俺をさっきのみたいに襲うつもりなんじゃ・・・)

 晶がそう思って恐る恐る少女を見ると、睨み返してきた。その眼差しは正に、獲物を狙う鷹の目である。

(こっこえ~!)

 晶はもう、逃げ出したかった。いや、むしろ逃げ出そうとしていた、その時である。

「ああ、来てる、来てる~」