「この化け物め・・・お前達の仲間でも、増やすつもりだったのか?」
『ソレハ、ココデ死ヌオ前ニハ関係ノ無イ事・・・』

 そう言うと、狼が少女に襲い掛かる。少女が避けると、狼は伸び、しつこく追い回す。

「ちっ!しょうがないな・・・・・黄泉の糸!」

 少女はそう叫ぶと、鎖を放す。すると、鎖は蛇のように地を滑り、相手の動きを封じ、締め上げ始めた。

『ギョアアア!』

 相手の悲痛な叫びが響き渡る。その間も、鎖はギシギシと音を立てながら締め付け続け、やがて相手は動かなくなった。

「黄泉の糸!」

 少女が叫ぶと、鎖は相手から離れ、少女の手の中に静かに戻った。
 束縛するものが無くなると、相手は力なく倒れる。
 少女は、哀れなものを見るように、その者を見下ろした。

 すると、見る見るうちに相手は、砂へと変わり、風に流されて跡形もなく消え去った。
 見届けると、初めて少女は晶に声をかけた。それは先程とは違い、優しい声である。

「混乱しているだろうが、お前にはこれが見えるか?」

 そう言うと手を突き出す。手の中には、先程の鎖がゆらゆらと揺れていた。
 晶は、混乱しながらも、一応答える。

「ま、まあ・・・そんな事よりも、さっきの奴なに?っていうか、この鎖なに?」

 晶の答えを聞くと、少女は頭を押さえる。実に困っているようである。

「はあ、やっぱり適合者か・・・」

 それだけ言うと、少女は携帯を取り出し、何処かに連絡を入れる。所々、会話が聞こえて来た。

「・・・・はい、私です・・・適合者が出て・・・・分かりました。」

 少女は、携帯を切ると、晶を立たせた。

「すまないが・・・私と一緒に来てくれないか?」
「は、はいい?」
「これは君の命に関わる事でもあるんだ」
「えっ、いや、ちょっと待って・・・」
「いいから!」

 そう言うと、少女は答えも聞かずに晶を引っ張っていった・・・