後ろから、何かを引きずるような音が微かに聞こえてきた。

「誰だ!」

彼は思わず自転車の上で身構えた。
しかし、そこには何もいない。こうなると、実に滑稽な姿だが、彼自身は気付いていない。

(おかしいな?)

そうは思いながらも、交番に戻ろうとする。すると、後ろからまた、さっきの音が聞こえてきた。
今度は、さっきよりもはっきり聞こえた。

ズルリ・・・・ズルリ・・・

健は思わず自転車を止める。すると、それに合わせて音も止まる。
それを数回続けると、健は、怖くなった。膝がガタガタと震え出しそうである。

(確実に何かにつけられている・・・)

その思いが健の頭に広がる。しかし、彼も警察官の端くれ、伊達に警察官になった訳では無い。彼には彼なりの度胸があるのである。
健は頭に広がったものを一時、頭から押し出すと、一気に振り返った。

「!!」

ガシャーン!

自転車がその場に倒れる。
静かな街に、健の声にならない叫びが響いた・・・