晶は大樹を殴ってやりたくなったが、大樹の言う事は事実で、ここにいる事が一番安全であろう。それに、幸い自分には早くに両親を亡くしたため家族がいない。

 反対する者がいないから、すぐに引っ越せるだろう。さらに金が貰えるとは、いたりにつくせりである。もはや、晶に抵抗する理由は残されていなかった。

「分かったよ。あんた等の仲間になる。その代わり、全て説明してもらおうか?」
「良し、決定。ミキ君、入隊書類持ってきて」
「分かりました。」

 ミキが書類を取りに行っている間に、大樹は話し出した。

「まあ、んじゃあ手っ取り早く説明するよ・・・。まず、君を昨日、追い掛け回していた奴ら。
あいつ等は『知恵の実』って言う闇の組織だ。」
「知恵の実って、あのアダムとイブが食べた、地上に追放される原因になったやつ?」

 大樹は静かに頷いた。
 知恵の実・・・それは、キリスト教の神話で、昔、人間がまだ神と暮らしていた時に、神が最初の人間、『アダム』と『イブ』に、「この果実は絶対口にしてはいけない」と言った果実である。

 現在では、その果実は林檎であろうと考えられている。

「組織『知恵の実』の名前の由来は、禁忌の力を手に入れて、追放された者達の集まりと言う意味らしい。」

(なるほどな・・・・組織を手に入れた自分達は、『アダム』と『イブ』、『知恵の実』はその組織であるって訳か。)