他に開くところは無いかと手探りで、探していく。

「…見つけた!…開かない」

何箇所かドアノブは見つけたけどただの一箇所すらも開かなかった。

どうしよう…!

と、そのときだった。

───────カツン。

なにか…足音の様なものが聞こえてきたのは。

─────カツン。

徐々に近づいてきている…?

ぞぞぉっと背筋を悪寒が通っていった。

───カツン。

そして、私は弾かれた様に走りだした。

怖い、怖い、怖いぃっ!


魔王さんっ…!
大魔王さん!

───カツ、カツ、カツ

追い掛けてきてる!?

やだぁっ…。

あまりの恐怖にじわっと涙がにじんできた。

「助けてください!大魔王様ぁ」

私は半泣きになりながらも、叫び散らす。

「──苺っ!」

「…え?」

状況判断をする間もなく。
私は突如、開いたドアの中に引きずり込まれた。

「大、魔王…さん?」

「そうだ…。静かにしろ」

あまりの安堵感に涙腺が崩壊してしまった。

よかった…、よかった!

声をあげないよう、大魔王さんの胸に顔を埋めて泣く私。

────カツン

あの足音!
身体中の筋肉が硬直する。
大魔王さんの腕に力がこもった。

─────…きぃ

すぐ近く。
部屋のドアが開かれた音が聞こえてきた。

────カツ、カツ、カツ


そして足音は─…。
遠ざかっていった。