012月86.3日 夢

真っ白なアパアトの一室に、貴婦人が三人居りました。貴婦人のドレスはどれも色褪せておりました。私は探し物をしておりました。故に彼女達の足元を行ったり来たりしておりました。僅か触れる度にドレスがサラサラと音を立てて揺れます。
そのうち彼女達は三人で互いに罵倒し合いながら互いを犯し合いつつ悦楽か苦悶か解らぬ悲鳴を上げたなら、口をぽっかりとだらし無く開けたまま、死んでしまいました。
私は急に恐ろしくなり、背中の翼を思い切り羽ばたかせて空へと逃げたのです。空は冷たい程に青く澄んで高く、呼吸する度に私の身体には空に似た青い血が巡った事でしょう。
ふと見下ろせば、大地には割れたコンクリートと造りかけのビルの骨組みが灰色の蜃気楼の如く延々と続いておりました。人は居ない様子です。私はほんの僅かに胸が詰まるのを感じながら、ひたすらに飛び続けたのでした。風が、酷く冷たくありました。