シサがランスの治療を止め、近くに置いてある杖を手に取った。


シサの目がいつもと違って鋭い。


「人間には、言っていい事とダメな事がある。それが分からないなら、教える」


「まぁまぁ、落ち着いて。俺もランスも気にしていないから」


ランスに至ってはこの空気に気付きすらせず、自己暗示をかけ続けている。


まぁ、天才と言われて傷付くような人間ではないので、大した問題は起こさないだろう。


そんな事を考えていたら、今度は「私は天才、私は天才」と暗示をかけだした。


生れつき頭の中がお花畑になっている事を、人間は天才と呼ぶのだろう。


「今のミュの言い方は許せない。悪意があった」


一方、こちらは切迫していて、まるで水の無い荒野。


「まぁまぁ……。ところで、ミュは僕達の事をどれくらい知っているの?」


「あなた、人間に作られたんでしょ? ランス・ロー・フィールドを見て思い出したわ」


「まぁ、人間は人間から生み出されるから、間違いじゃないよ」


個人的には面白い事を言ったつもりであったが、空気がなぜか死んでしまった。


シサやミュはもちろん、ランスまでこちらを見てくる。


態勢を立て直すために咳ばらいをした。