そんな声が聞こえ、背中にストンと軽くて柔らかいものが落ちてきた。


ついでにちょっとだけ良い匂いがしたのだが、そんな事を言うとランスに首を切り落とされかねない。


「なかなかに快適だ」


ランスは満足そうに言った。


「こら、髪の毛を掴むな」


「大丈夫、抜きやしない」


「毛根に傷をつけないでくれよ…………」


そんな悪態をつきながら立ち上がる。


ランスを乗せて部屋から出ようとドアノブに手をかけたが、ふと重要な事を思い出した。


「ねぇランス。このまま出ていくと、多分大騒ぎになるよね」


「大丈夫、大騒ぎになっても私は構わない」


「そうはいかないよ。ランスがこてんぱんにされるような相手が潜伏しているかもしれないって思ったら、ギルドが恐慌状態になっちゃう」


「なんだ、そういう事か」


心底つまらなさそうな声を出す、トラブルメーカーのランス。


こんな人間がギルドの一部隊を率いているのだから、人選とはいいかげんな物である。


「裏から出ていくよ」


「裏……? まさか、窓からとは言うまいな?」


「え? そのつもりだよ? 他に無いでしょ?」