「こうなってくると、いよいよ安全な場所は無くなってきたね」


「確かに。しかし、今だ私達の防衛が突破されたわけではあるまい。次こそは!」


ランスは左の手の平を右手の拳で音高く殴ると、「うっ」とお腹から搾り出したような声を上げた。


目を白黒させて包帯の上から腕をさすり、傷をいたわっている。


また傷口が開いたようで、包帯に血の赤が広がっていた。


「無理しちゃダメだよ。安静にしていなきゃ」


「無理などしていないつもりだが」


「そんな涙目で訴えても説得力無いよ。とりあえず、ミュに治してもらおうか」


「……あのなフェイ」


もじもじしているランス、何か言いたいようだが、言葉を続けない。


「どうしたの?」


「腰が抜けて動けんのだ。おぶってくれないか?」


恥ずかしそうに言うランス、なかなか珍しい事である。


そして、ランスがそうなってしまう程に敵の勢力が強大だと言うことを再認識させられた。


「ほら」


ランスが座っている机の前に行き、乗っかりやすいように屈む。


「済まない」