少しの間があってからお兄さんはひび割れた声で叫び、
ナイフを振り上げる。


これ以上の説得は不可能と判断し、
お兄さんの腹部に掌打を入れた。


お兄さんは口と目を大きく開いたが、息を短く吐き出すと目を閉じた。


「さてと、そこのおじさん!」


「は、はひぃ!」


もうこれ以上は無いと言うぐらいに青ざめたおじさんが、女の子の下からはい出てきた。


「あなたはまだ未遂という形になるから、これ以上のお咎めはありません。守護隊のお世話になる必要もないですし」


「は、はい。ありがとうございます」


「ただし。もし同じような現場に再び出くわした場合……」


おじさんの耳元に近づき、呟く。


「あなたの男性機能を欠損させます。分かりましたね」


おじさんは牛乳のような顔色になった。


「はい、結構です。では、帰り道に気をつけて」


おじさんは二歩三歩後退り、後は走ってこの部屋を出て行った。


残るはこの女の子。


女の子はさっき伏せていた場所に体育座りをしている。


「あなたは一番の被害者ですね。とりあえず、守護隊からいくつかお話を聞くことになると思います」