女の子は両手で耳を塞ぎながら、
恰幅の良いおじさんを地面に押し倒した。


おじさんの頭に女の子の胸が当たっている。


目が勝手におじさんの薄い頭上へ焦点を合わせた。


手の平サイズだろうが、
代われるなら代わってほしい。


「死ね」


お兄さんがそういうと、
銃声が三度響いた。


三発の銃弾が回転して向かって来るが、
軌道に合わせて右腕を振って払う。


「当たりません」


「は?
嘘だろ……」


「嘘じゃないですよ。
ほら」


手に持っていた三発の銃弾を地面に落とす。


地面の砂に音は吸収されるが、
金属同士がぶつかり合う鈍い無機質な音はした。


手袋をしている上に衝撃を吸収しながら掴んだのだが、
それでも手の平が貫通したかと思うほどの衝撃。


「本来なら僕の頭と胸とお腹を貫いたはずなんですけどね。
こんなに痛いとは思いませんでした。
次回は気をつけます」


「……信じられない」


お兄さんは口を半開きにしている。


ハンドガンを持った右手はだらりと下げていた。


「それでは、守護隊に行きますか?」


お兄さんはハンドガンを再びこちらへと向けながら左手を腰のポシェットに回し、
ナイフを取り出した。


「それも許しません」


一瞬で間合いをつめ、
お兄さんがハンドガンを発砲する前にその銃を掴み、
銃口を上に向けながら捻って銃を奪う。