それから何回か僕はあの海辺のカフェテラスを訪れている。

 あのマスターも相変わらずだ。
 話によると、大分年下の嫁さんをもらっていて、可愛くて仕方がないみたいだ。

「……そうすると、俺が恋のキューピッドになる訳だな」

 マスターは変わらず、のんびりした口調で語る。
 頷きながら、僕は海に目を向ける。

 白いサンドレスを翻して、彼女は微笑む。
 ……僕達の娘を連れて。


 出逢った頃と同じ風が、海岸を吹き渡って行った。