どのくらいそのままでいただろう。
 腕の中で彼女の柔らかい体を感じ、彼女の髪の甘い香りが鼻をくすぐる。



 我に帰り、僕は抱きしめていた手を緩めた。

「……すいません」

 彼女は何も言わず、少し涙を浮かべた瞳で僕を見つめる。
 微かに唇が動く。


『……キスして……』




 自分の耳を疑う間もなく、唇を重ねていた。