「無口なネコ。俺ン家に連れて帰っちゃうから」 ――ミルク、飲みに来たの? 長い髪が、サラリと俺の腕に落ちる。 あいにく、耳が隠れてるから “耳付近” に唇を近づけてささやく。 『美桜』 と、いう名のネコを抱き上げたままゆっくりと歩き出した。 からかったつもりだったのに。 いつの間にか その小さな手に、首に巻いていたマフラーの裾をギュッと掴まれていて。 これは…… 決して口には出さない 彼女なりの“SOS”なんだと。 そう勝手に解釈させてもらった。