幼心にも、ひとつだけ分かってしまったこと。



それは――…

空をオレンジ色に染めていく、夕日の光とは裏腹に

ふたりの背中は残酷な程に……
真っ黒に染まっていたこと。



光が存在すれば、
必ずどこかに闇が生まれる。



幼い心で……
聞いてしまってはいけないこと、見てしまってはいけないものを

見てしまった――。



決して踏み込んではいけない場所のような気がして

真っ黒に塗りつぶされたふたりの背中を……

部屋には入れず、――ただ廊下から呆然と見つめることしか出来なかった俺。


もしもあの日に戻れたのなら、
俺はあの部屋に

ふたりの元に歩んでいけたのだろうか。


今はもう、決して叶わない願いだけど

寄り添っていたはずのふたつの背中が、なんだか寂しいものに見えたのは

決して気のせいなんかじゃないんだと、

――今になって気が付いたんだ。