バルドは、給金係に酷く痛めつけられ、数時間、冷たく暗い裏路地で気を失って居ました
すると…雨が一つ二つと降り、次第に雨粒が数を増しバルドの顔に雨粒が当たり、目を覚ましました。


バルドは仰向けになり、雨雲を見つめ思いました…『あの黒い雲の様になって、こんな下らない世界を覆って壊してしまいたい』

そして、起き上がろうと思い、もう一度俯(うつぶ)せになり四肢(しし)に力を入れた時だった…
右手の下にある地面のヒビから黒い糸が、モヤモヤと踊っているのに気がつきました。
バルドは、その黒く踊る糸を人差し指で触ろうとした…その時!
黒い糸はバルドの人差し指にガッチリ絡み付きました。
バルドは驚き、黒い糸を解(ほど)こうと思い、糸を摘もうと焦っていました。
だけど、黒い糸はバルドを放しません。

すると…何処からとも無く声が聞えました。『選ばれし者よ…私をよく見つけた…』

バルドは、辺りを見渡しました。
だけど、誰一人いません。けれど表通りは、まだ、大勢の人で賑わっています。

バルドは、信じたくは無いが、声の主は『黒い糸』から発せられているらしいと、バルドは確信した。