「だって亜矢、今にも転びそうだったし」 亜矢はため息をついて呟いた。 「もうとっくに転んだわよ…」 よく見るとスカートに雪がついていた。 「マジで?馬鹿だな。 何年この街に住んでんだよ。雪なんて慣れてるだろ?」 「毎年、雪の降り初めは転ぶもんなの!」 そっぽを向いて怒る亜矢の右手を掴んで俺は歩き出す。 「ちょっと…!?手…!」 俺の上着のポケットにその手をしまう。 「また転んだら困るからな」 っていうのは口実で、ただ手を繋ぎたかっただけだけど。