目の前に立っているのは、前より少し歳をとっているけど、見間違えるはずもない人の姿。
「母さん…なんでここに…?」
親父はゆっくり立ち上がり、母さんに向かって穏やかに口を開いた。
「…よく来てくれた。あと30分位は余裕がある。俺は搭乗口にいるから、後で悠斗を連れて来てくれ」
そう言って、そのまま立ち去った。
親父が呼んだのか…?
母さんは、俺の隣の席を空けて、その隣に腰掛けた。
「悠斗…本当に大きくなったわね…」
俺は、声が出せなかった。
会いたくて、会いたくて…何度も泣きながら寝た小さな頃を、思い出して胸が苦しくなる。

