耳にヘッドフォン、手には文庫本、のバス待ち定番の格好で。 「キイチ君!」 しかし先程から吉希は本を読みながらドキドキしていた。 それは彼の読んでいる本が、猟奇的な主人公が斧を振り回して罪のない人々をメッタ斬りにしていくという、物騒な内容だから…というわけではなく。 「ねぇ、キイチ君!」 何者かが、彼に話し掛けているからだった。 しかも女の子だ。 ヘッドフォンから流れるヒップホップのメロディ越に聞こえてくる、カン高いキンキン声。 彼は振り返ったと同時に驚いた。