相澤吉希は少なからずとも驚いていた。 「キイチ君!」 それは、身体の芯から凍ってしまいそうな冬の日の出来事だった。 空は厚ぼったい雲に覆われ、吐いた息も雲と同じくらい白い。 日の光りも全く射さない11月の午前11時。 数分前から吉希は大学に向かうためのバスを待っていた。 閑静な住宅地の中に横たわっている大通り、その途中にちょこんと存在している屋根つきのバス停は、お昼近くの時間に利用している人はほとんど見られない。 そう、彼は一人でバスを待っていた。