ゼロクエスト ~第1部 旅立ち

形の良い、艶のある唇から発せられるその言葉も、低音で甘い響きをしていた。

この顔に、この声。

条件の揃っている男に間近で見詰められたなら、女の子なら誰だってヘロヘロになるだろう。

実際私も、頭の芯から徐々に自分が溶けていくような、そんな錯覚を覚えていた。何らかの術にでもかかっているかのように、目の前もクラクラする。

と、突然青年の身体が動いた。そして。

いきなり私を抱き締めるのだった。