席を立ち、なんとか携帯を取り返そうとするものの、ちょこまかと雅紀は逃げ回る。
そういやこいつ、高校まで陸上部だったとかで、足が速いんだった。
がんばるものの、雅紀の足の速さについていけず、俺は上がった息を整える。
その間にも、雅紀は茅乃の名前をアドレスから見つけてしまったらしく、電話をかけた。
マジでやばい!
不機嫌丸出しで茅乃は出るに決まってるし………。
話している感じがしないところを見ると、まだ茅乃は出ていないらしい。
その間にも―――…
そう思って、雅紀の元へと全力疾走で走っていくが―――…
ちょうど、目の前までやってきたところで、雅紀は「あの、茅乃ちゃん?」と明るい声で茅乃の名前を呼んだ。
「あ、驚かせてごめんね。
圭史の名前なのに、驚いたでしょ?
俺、圭史の友達の野上雅紀(のがみまさき)って言います。
………うん、そう!
え? 圭くんって……、ああっ、圭史?」
雅紀はニヤリとした笑みを浮かべながら、俺のことを見てくる。
茅乃には『圭くん』と呼ばれることに抵抗はない。
だけど、こいつらにからかわれるのはなんとなく嫌だ。
「雅紀、いい加減返せよ!」
携帯を何とか奪い返そうとするものの、雅紀の奴は器用に避ける。


