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「あの~…、圭くん?」
「なんだよ」
前を見たまま、不機嫌に答える圭くん。
そりゃ、運転中だから前を見ておかなくていけないのは、当たり前なんだけどさ。
妙に威圧的なオーラをこの狭い社内の中で振りまかないでもらえるかな?
たった一言だったのに、あたし、びびっちゃうじゃん。
怖いけど、あたしはなんとか勇気を振り絞って、圭くんに聞く。
「一体、どこに向かってるの?」
「・・・・・・」
答えは返ってこなかった―――…。
あたしは運転免許なんて持っているわけもなく、道に詳しくもない。
だけど、さすがに家の周りの道ぐらいはわかってる。
だから、どう考えてもさっきの道は右に曲がるものだと思っていたあたしは、つい圭くんに聞いてしまったんだ。
だって、あたしの頭の中にはさっきの圭くんの『お仕置き』という言葉が張り付いていて、このまま家に返してもらえないのなら、あたしはどこに連れて行かれ、お仕置きをされてしまうのだろうという不安でいっぱい。
さすがに、幼なじみであり、彼氏でもある圭くんのことを信頼していないわけではないけど―――…
「ねぇ…。どこに――…」
「家」
もう一度聞いてみると、一言だけ返ってくる。
家ってことは、やっぱりウチに送ってくれてるんだよね?
もしかして、あたしは知らないけど、近道とかあるのかな?
抜け道とか。
そっか、そっか―――…。
家に送ってくれているのだとわかったら、ホッとした。
あたしは、助手席に安心して背を凭れさせた。


