「ハァ~…。
それにしても、誠くんには、やられたわ。
まさか、あなたに裏切られるとは思わなかった」
「裏切られるなんて人聞き悪いな~。
そもそも俺は元倉さんの味方じゃなかったからね。
それは裏切りとは言わないと思うんだけど?」
「あなたって、意外と策士なのね」
フッと笑う静香さんを見て、彼女の心は一つの区切りをつけたんだとあたしながらに思った。
「まあ、いいわ」
静香さんは顔にかかった髪をはらってから、扉へと向かっていく。
「それじゃ――、さよなら―――…」
最後に聞こえた言葉。
あたしは、自分の胸をギュッと掴んだ。
どうして、恋ってこんなに複雑で難しいんだろう。
誰もが好きな人と一緒に慣れたらいいのに―――…。
だけど、そんなに上手くはいかないんだ。
扉が閉じられた後も、あたしはジッと静香さんが去ったその姿を見つめていた。


