「もう、いいわよ。
あたしは、どんな女にも靡かない圭史が好きだったの。
一人の女に溺れるような圭史は、あたしの好みじゃない。
そんなの、あたしが好きな圭史じゃない。
だから、もういい!」
フンッと顔を背ける静香さん。
「静香―――…」
きっと、それは静香さんの本心じゃない。
静香さんは本当に圭くんが好きで、きっと、どんな圭くんだって好きなんだ。
静香さんはふとあたしのほうを見てきた。
そして、にっこりと笑う。
それは今まであたしに見せていた静香さんの笑顔とは全然違っていて、本当に優しい初めて見る笑顔だった。
きっと、これが静香さんの本当の笑顔なんだ。
「ごめんね、茅乃ちゃん。
今まで、今日も怖い思いをさせてごめんなさい」
頭を下げる静香さんに、あたしは慌てて手を振る。
「い、いえ。
あたしのほうこそ、すみませんでした」
「どうして、茅乃ちゃんが謝るの?」
だって、それは―――…
「あたしが、初めから静香さんに自分の気持ちを正直に話しておけば――…。
あたし―――…」
「それでも、茅乃ちゃんは謝る必要なんてないわ。
あたし、きっと初めから茅乃ちゃんに圭史への気持ちを聞いていても同じことをしたと思うもの。
だから、茅乃ちゃんは謝らないで」
ニッと少し勝ち誇ったような笑みを浮かべる静香さん。
それは、いつもの静香さんと同じだった。


