「なぜ、今更これを?
あたし、別に逃げたりはしませんが………」
そりゃ、逃げたいという気持ちはあるよ?
だけど、無理だし………。
それに、ここに圭くんが向かってるっていう時点で、逃げるつもりもなくなったし。
「ダメよ。
そう言って、逃げちゃったら圭史が来てくれても意味ないんだもの」
思わず、眉が寄る。
「あの…、一体何を企んでいるんですか?」
「あら。人聞きの悪い。
全然企んでなんかいないわよ?」
その顔で言われても、今のこの状況で言われても、全く説得力なんてないんですけど?
「そうね~…。
じゃあ、教えてあげる。
あなたに見せてあげるの。
あたしと圭史がどれだけ愛し合っていたかって、ね!?」
愛しあっていたか?
ますます眉が寄った。
なんか、今の構図から考えると、意味がわからない言い方なんですけど………。
「とにかく!
茅乃ちゃんは、ここにでも座って圭史が来るのを待ってて」
あたしは静香さんに強引に引き連れられ、奥にあるソファーに座らされた。
そして、静香さんはというと、いそいそとカウンターの中へと入っていく。
なんか、すごく上機嫌。
きっと、圭くんがここに向かっているからなんだろうな………。
こんなことをしてしまっていたら、きっと圭くんからは、好意的な言葉なんてかけられるはずなんてないとあたしは思うんだけど、静香さんはそうは思えないのかな?


