「ショック~…。茅乃、覚えてないの?
圭(けい)くんのこと」
「圭くん?」
「そ、圭くん。
水無月圭史(みなづきけいし)くん。
茅乃、小さい頃よく遊んでもらったのよ」
小さい頃って、いつの頃だ?
水無月のおばさんは、ママと仲良しだからよく家に来る。
だから、よく知ってるけど………。
そして、おばさんの家には一人息子がいることも知っている。
だけど―――
「あたし、圭くんと遊んだ記憶って、すっごく昔しかないんだけど?」
確か、その圭くんはあたしよりも四つも年上で、一緒に遊んでくれたのは彼が小学校の低学年ぐらいまで。
だから、あたしの記憶の中でも彼の面影ってあまり残っていない。
おまけに近所は近所なんだけど、ウチの家と水無月家とは道を挟んで、もう一つ向こう側の筋。
自分たちから会いにいかない限りは顔を合わせることも滅多にない。
それでも、彼が小学生の時は集団登校だから、顔は合わせていたものの、中学に上がってからは全然知らない。
だから、遊んでもらったと言われても、あたしの記憶にないのも仕方がないことなんだけどな………。


