「そんなの決まってるだろ。

家庭教師の話をなかったことにするって話だよ」





 んがっ!?


 すでに、口調まで………。


 こ、こいつ、やっぱり拓斗が言っていたとおり。


 それと同時に、こいつに昔よく泣かされていた自分まで思い出してしまう。


 こ、こいつ、悪魔だ。


 小さい頃のあたしは、こいつは綺麗な顔をして悪い悪魔のような奴だと思っていた。


 成長しても、全然変わってないじゃないか!





 あまりに突然の変貌振りに焦ってしまったが、落ち着けあたし。


 ここで、怒りに任せて言い合いをしていては絶対に話は通らない。


 ここは一つ、年下であるあたしが大人になるのよ。


 こいつが全く成長していない分!


「でも、圭くん。

圭くんはあたしの家庭教師をすることにメリットってあるの? 

圭くん、確か一人暮らししてるんだよね?」


「そうだけど?」


「それなら、わざわざ週二回もここまで来るのって、大変じゃない?」





 そうだよ。


 家を出るぐらいなんだから、ここに来るまではかなりの距離があるはず。


 これを逆手に取れば、きっと圭くんは折れるはず………。


 題して、

『痛いところ突き作戦!』


「別に。

俺が借りている部屋って、ここから近いし。

車だと、二十分ぐらいだから」


「へ!?」





 そ、そんなに近く?


 車で二十分って、そんなところに圭くん住んでるの!?


 そんな近くなんだったら、一人暮らしする必要ないじゃない!


「でも、えっと………」