「茅乃。

見てる分には、とても楽しいんだけど、何かあった?」





 項垂れているはずの、あたしの頭上から声が聞こえてきて、あたしは顔を上げた。


 すると、机にちょこんと顔を乗せるようにしゃがんでいた真澄と至近距離で目が合った。


「―――何もない」





 一言そう呟くと、「えぇ?」と抗議の声。


「あんなに、行動がおかしかったのに? 

クールビューティーの異名を持つ茅乃があんなにわたわたと一人でしている姿を見て、クラスのみんなが不思議そうに見てたわよ」


「いや。

そもそも、その異名とやらを持った覚えは、全くないんだけど―――…」





 だから、そもそもそんな名前を誰が言い出したんだっての!


「何かあったんでしょ? 

教えてよ!」





 キラキラとした目であたしのことを見てくる真澄を、あたしは冷たい目で見つめた。


「あのね、真澄。

教えてよって言っておきながら、その手に持っているものはなに!?」


「へ? あ、ばれた?」





 ばれたってね―――…





 真澄の手には、今や真澄の三種の神器とでも言える手帳とペンが握られている。


 いや、二つだから、二種の神器?


 って、そんなことはどうでもよくて!


 あぁ~…。


 心が落ち着かないから、なんか、いろいろなことに対して落ち着きがなくなってる。


「あれ~? 茅乃。

また、どこかにトリップ?」





 首をかしげながら、あたしのことを見てきた真澄を見て、あたしはハッとした。


 それと同時、「やっぱり、怪しい~…」と疑いの眼差しを向けられた。