「あ、あのっ!」
「ん?」
疑いもなく首を傾げられ、あたしはなんとなく気まずくなってくる。
別に圭くんが悪いわけではないのに、断るという自分の意思。
そのことになんとなく申し訳なくなる。
「け、圭くん!」
つい、名前を呼んでしまってから、あたしは「あっ」と口の前に手を置く。
つい、圭くんと昔の呼び方で呼んでしまった。
うっかりミスに慌てていると、圭くんはクスッと笑う。
「別に『圭くん』でいいよ。
茅乃は昔から、俺のことそう呼んでたもんな」
あ…、圭くんも今、『茅乃』って………。
「どうした?
俺に何か話したいことでもあるのか?」
開いていた教科書を閉じて、圭くんはあたしのことをジッと見てくる。
あたしは、どうしようかと迷いながらも、圭くんが差し出してくれたチャンスを受けることにした。
「あ、あのね、圭くん!
この家庭教師の話、
なかったことにしてもらいたいの!」
本当はいろいろと遠まわしに言うとか、考えていた。
だけど、実際にあたしが言ったのは、直球ストレートだった。
言おうと思っていたことを言えたあたしは、少しだけ気が軽くなる。
チラリと様子を窺うために圭くんを見ると、圭くんを目を見開いてあたしのことを見ていた。
そ、そりゃ驚くよね。
あたしだって、こんなに直球で言うつもりなんてなかったんだけど………。
「………なんで?」


