「それじゃ。
途中でママ、何か飲み物でも持っていくわね」
階段を上っていくあたしたちに、ママはこれ以上ないほどにうれしそうな声でそう告げた。
そんなママに、圭くんは「お構いなく」とこれまた当たり障りのない受け答え。
あたしの中の圭くんって、かなり意地悪な印象があったんだけど、年月って人の性格さえも変えちゃうのかしら?
やっぱり、圭くんも成長したってことなんだよね。
しみじみ思っていると、すでにあたしの部屋の前まで到着。
あたしは諦めながら部屋のドアを開けると、「どうぞ」と圭くんを中へと促した。
「ありがとう………」
一言礼を言うと、圭くんは特に部屋中を見渡すこともなく、すでに座布団が用意されていた部屋の真ん中のテーブルの前に座った。
むやみに部屋の中を見渡すのは失礼だってことに気づいてるのかな?
そういうところは、かなり高ポイント。
あたしは圭くんが座った向かい側に座る。
ふと、座って顔を上げると目と目が合ってしまった。
そりゃ向かい合わせに座ってるんだから目が合うのは仕方ないんだけど………。
なんか、恥ずかしい。
だって、知り合いとはいえ、何年間も会ってなかったし。
おまけに男………。
恥ずかしくないわけがない。
と、とにかく何か話さなくちゃ。
沈黙はかなり気まずい。
えっと………。
圭くんと会ったら、何を話すかシュミレーションしていたはずなのに、そんなことすっかりと頭から抜け落ちている。
頭の中は真っ白な状態。
何を話そう。
何か話さなくちゃ。
その考えが頭の中をぐるぐると回る。
どうしよう、どうしよう、どうしよう………。


