「茅乃ちゃん………だよね?
すっごく久しぶり」
「こちらこそ。圭史さん」
さすがに、昔のまま『圭くん』だなんて言う度胸はなく、あたしは敬称をつけて呼ぶ。
だって、圭くんだって、あたしのこと『茅乃ちゃん』だなんて。
昔は『茅乃』って、呼び捨てだったんだから。
お互いそれだけの月日は流れているということ。
「まあまあ、
こんなところで立ち話もなんだから、お部屋に入ってちょうだい。
ほら、茅乃。
お部屋まで圭くんを案内して」
お互いに作り笑いを浮かべあっていたあたしたち。
そんなあたしたちの間に、ママは割り込んであたしを促す。
本当は他人を、それも男を自分の部屋に入れるだなんて、たとえ家庭教師でも抵抗ありありなんだけど、仕方ない。
あたしは見えないように溜息を一つ吐いた後、圭くんに笑顔を作る。
今日だけの辛抱だもん。
我慢我慢!
「どうぞ、圭くん。上がって」
「ああ、ありがとう。
それじゃ、お邪魔します」
軽く頭を下げながら、圭くんはウチの家へと一歩足を踏み入れた。


