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「あたし、ホット。茅乃ちゃんは?」
前と同じように聞かれ、あたしは「あたしも同じものを」とメニューを見ることもなく、同じものを頼んだ。
とてもじゃないけど、はしゃいで何か選んで注文するなんて、そんな気分ではない。
結局、あたしが静香さんから手を離されたのはこの前と同じカフェの前に来てからだった。
あたしはテーブルの下に手を隠すようにして掴まれていた腕を擦る。
離された時に見たけど、そこにはくっきりと赤く痕が残っていた。
もちろん、ただ掴まれていただけだから、内出血とかそこまではいかないけど、なんとなく怖い。
だって、人が、それも女性がそんな痕がつくほど握るってよっぽどのような気がする。
静香さんは注文する時に持ってきてくれたおしぼりで丁寧に自分の手を拭く。
それだけの動作なのに、それさえも優雅に見えてしまうのだから、これもこの人が育ってきた環境なのだろうなと思う。
「ごめんなさいね。
ちょっと、強引だったかな…?」
ええ、かなり―――…。
フフフと笑う静香さんに内心で、そう呟きながらもあたしは「いえ」と返す。


