「ちょっと話したいんだけど、時間とか大丈夫?」
「え? 話ですか?」
「うん、そう。
この前のカフェとかで、どうかな?」
それはつまり、こんなところでちょこっと立ち話で済ませられる話ではないということですね。
「あの、六時から家庭教師があるので、それまでには家に帰らないと―――…」
その家庭教師の相手が圭くんであることが、少し後ろめたくて、あたしは言いながら、語尾がどんどんと小さくなってくる。
「あ、そうか…。
今日は、家庭教師の日なのね?
じゃあ、圭史と会うんだ…」
最後に言った声がすごく冷たくて、あたしは思わず静香さんを見てしまう。
だけど、そんな声など、聞き間違いかと思うほど、静香さんはにっこりと微笑んできた。
「じゃあ、それまでちょっと付き合ってもらえる?
ちゃんと、それまでには終わらせるから」
「・・・・・・」
どうしよう?
気のせいかとも思える。
だけど、さっき聞こえた静香さんの冷たい声に、なんとなく付いていかないほうがいい気がする。
「ね?」
どうしようかと悩んでいると、静香さんはそう言うと、強引にあたしの腕を掴んできた。
そして、まだ返事もしていないのに、無理やり歩き出す。


