部屋を出て、階段を降りていたら、下で仲良く話しているママたちの会話が耳に入ってくる。
「本当にごめんなさいね。
急に無理を言って」
「いえ。
僕も一人暮らしをしている身としては、バイト代を頂けるのは有り難いです」
「そう言ってもらえると、こっちとしても助かるわ~」
何がだ。
階段を降りながら、ママのうきうきする声にあたしはケッと毒づく。
喜んでいるところ悪いけど、あたしはこんな家庭教師の件は断る気満々なんですから。
クルリと螺旋とまでは言い切れない階段を半分降りたところで、あたしは玄関に立つ男と目が合った。
あ………。
写真でだと半分しか顔は写っていなかったし、軽く見ただけだったけど、こいつかなりカッコいい。
ママが
「かっこいいと思わない?」
と聞いてきたのも納得がいく。
こりゃ、かなりの上玉。
さぞかしおもてになることでしょうね。
だから、寄ってくる女が煩わしくて女に冷たくなったのか?
勝手な推測を立てていると、こりゃまたにっこりとあからさまな作り笑いを浮かべられた。
一応、営業スマイルというわけね。
あたしは女だけど、一応、家庭教師をする相手だもんね。
営業スマイルを浮かべて機嫌を取らなくてはいけないわけだ。
向けられた笑みに、あたしも作り笑いを浮かべる。
こっちだってね、処世術は身につけているのよ。
たとえ、意にそわない相手にだって、笑みを浮かべるぐらいなんてことないんだから。


