「えっ!?
ちょっと、待って。
俺様って、俺様って、優しいとかそういうことは?」
「う~ん……。
俺は優しくしてもらっていたけど………」
チラリと窺うようにあたしのことを見てくる拓斗の様子から見て、その先に続く言葉はよくないことだと容易に想像できた。
そして、それは当たっていて………
「兄貴に聞いた話だけど………。
圭史って、女にかなり冷たいらしい」
女!?
女に冷たいって………
「………あたしも一応女………」
ボソッと言った一言に拓斗がブッと噴出した。
「な、なによ! 突然笑いださないでくれる?」
「だってお前。自分で一応ってつけるなよ。
一応って……くくっ…」
どうやらツボに入ったらしく、口を手で押さえながら拓斗は体を曲げて笑う。
そんなに笑えるほどのものだったか?
それにしても………。
やっぱり、拓斗に話したのは間違いだった。
あたしが話した分の収穫もなかったし。
とりあえずは圭くんはどうやら、女が嫌いらしいということ。
なんか、気が重いな~…。
だけど、よく考えれば女が嫌いということは、圭くんも家庭教師の話を受けるのは本意ではないのかもしれない。
それなら、家庭教師の話をなくしてもらうように頼めば、圭くんは受けてくれる?
希望が見え始めたあたしは、未だに笑い続けている拓斗の頭を一発だけ殴り、机の中から次の授業の用意を始めた。


