「なあ、圭史―――…。

お前、何かあったのか?」


「ぁあ? 

何かって、なんで?」





 講義が終わってすぐに、隣に座っていた雅紀は俺に聞いてきた。


「なんでって――…。

なんか、一人で悩んでいるようだったから。

いつもクールにしているお前にしては、百面相だったからさ」


「そうか?」





 百面相って、俺、そんなに顔に出てたか?


 そんな風には思えなかったんだけどな―――…


「そうだよ! 

で? 何があったんだ?」


「別に何もないさ」


「嘘だろ? 

何? もしかして、昨日の休みとかに茅乃ちゃんとデートしたとか?」





 一瞬ギクリとしながらも、俺はなんとか平静を装う。


「デートなんてしてねぇよ。

それに、なんでそこで茅乃が出てくるんだよ」


「だって、今のお前の心のバロメーターって茅乃ちゃんがおおいに占めてない?」


「占めてねぇよ!」


「そっかな~?」





 肘をつき、遠くを見つめる雅紀。


 だけど、雅紀の言っていたことは当たってる。


 俺の心が乱れている原因は茅乃だということは間違いないんだから。


 それに、デートとは言えないが、俺の家で試験勉強をして過ごしたし―――…





 それに―――…