よく言われるんだ。
『想い出に、一晩だけでいいから相手をしてくれ』って。
別に告白をされるわけでもない。
ただ、一晩の想い出に―――…。
気持ちもなく、言われるその言葉に、この女は俺の外見だけにしか興味がないのだと何度も気づかされる。
それと同時、むなしくなってくる。
俺の価値は、この顔にしか意味がないように思えて。
「茅乃。
俺のことぼろくそに言ってただろ」
「うん、そうだね」
そこは気を使って否定はしないのかよ。
まあ、予想はしていたけど。
「でも、ちゃんと圭史のことを見ていたよ。
ちゃんとね」
俺を見ていたか―――…。
そうだな。
あいつは俺の外見になんて興味はない。
昔、散々苛めたからな。
俺の中身はよく知ってるし―――…。
嫌われているということは、よくわかっている。
だけど、それでもホッとするんだ。
茅乃は上辺だけの俺を見ているのではなく、俺自身を見てくれているのだから。
「そうだな…。
だから、貴重なあいつだから、俺もお前には渡すつもりはないから」
新鮮な反応。
それだけなら、そんなに惹かれない。
あいつと居ると、いつもホッとする。
憎まれ口しか叩いてくれなくても、それでも、あいつを見るだけでホッとするんだ。
「うん。
僕も、本気だから」
にっこりと笑うコウ。
だけど、目は笑ってなどいない。
その瞳の奥はあいつの決意を表すように、熱く燃えていた。


