こんなにすっきりとした目覚めは久しぶりかもしれない。


 俺は起きがけの一服と煙草に火を点ける。


 だが、すぐに灰皿に煙草を押しつけた。





 確か、茅乃は煙草が嫌いみたいだったよな。


 これを機に、禁煙するのもいいかもしれない。


 俺はテーブルの上に置いてあった煙草の箱を握りつぶす。





 気持ちを認めるまでは落ち着かなかった。


 だから、随分茅乃には不審がられていたんじゃないかと思う。


 それは、俺の中であいつへの気持ちに気づきながらも、自分がその先に何をすればいいのかわからなかったから。


 だけど、俺はあいつが欲しい。


 他の誰にもやりたくない。


 だから、俺のものにする。


 そう気持ちが決まれば、すっきりした。





 そう思えば、お袋のあの強引な作戦も俺の後押しをしてくれたのかもしれない。


 まあ、本人に向かっては絶対にそんなことは言わないけどな。


 絶対に図に乗るのはわかってる。





 昨日は結局逃げるようにして、初瀬(はつせ)家を出た。


 いつもなら、実家に戻って食事をするのだが、お袋は茅乃の母さんと話に華が咲いていたのか、俺が黙って帰ったことにも、文句を言うこともなかった。


 後から、絶対に小言の電話がかかってくると思ってたんだが、そういうこともなかった。


「さてと~…、今日もやるか~…」





 今日の講義は二限から。


 だから、九時を回っている今でも十分間に合う。


 俺は冷蔵庫から無造作に入れてある牛乳をコップに入れ、飲みほしてから、車のキーを持ち外へ出た。