「―――で、この公式をここに当てはめて考えれば答えは出る―――…」





 おかしい―――…





 広げられた問題集の問題をペンで指しながら、説明をしてくれる圭くん。


 それは、家庭教師を受けているあたしからしたら、当り前のこと。


 だけど、ここ数日の圭くんの行動を考えると、おかしいと思わずにはいられない。


「わかったか?」





 そう言って、顔を上げてくるとあたしの視線と圭くんの視線が絡まった。


 その瞬間―――…


「と、とにかく、早く解け!」





 勢いよく目を逸らしたかと思うと、逸らしたまま偉そうに言ってくる。


 偉そうに言ってくるところは前と全然変わらない。


 だけど、自分からこうやって目を逸らしてくる圭くんは、なんとなく珍しくて―――…。


 いつもなら、ジ~っと見てきて「早く解け」と圧力をかけてくる。


 なのに、ここ何回かの圭くんはこんな感じ。


 なんとなく、いつもとは違う圭くんに、あたしはやりづらいというか、変な感じで気持ち悪いんだよね。


 この妙な行動さえも、圭くんが何かを企んでるんじゃないかと思ってしまう。


「何、じ~っと見てんだよ。

さっさと解け!」





 バシバシと問題集を叩く圭くん。


 あたしは「はいはい」と軽く受け流しながら、言われた通り問題を解き始めた。