必死になれるような奴―――…。


 確かにあの時の俺は、コウに微笑む茅乃を見て、イラついていた。


 それは、俺に見せたことのない表情をコウに見せていたから。


 俺には笑顔を見せてくれたことなんてなかったから―――…。


 だから、すごく悔しくて……、腹が立って………。


 なんで、悔しいんだ?


 なんで、腹が立つんだ?


 別に茅乃が誰に笑顔を向けようが、関係ないのならそんな気持ちさえも起こらないはず………。


 なのに、俺は―――…





 俺はその感情の名前を知っている。


 それは、嫉妬だ―――…。


 ずっと前に俺が置き去りにした感情。


 もう二度と誰かにそんな気持ちになることなんてないと思っていた。


 それなのに―――…


「自分の気持ちに正直になれよ。

でないと、後で後悔するのはお前だぞ?」





 後悔―――…





 それどころか、俺は茅乃のことが好き…なのか?


 自分の気持ちさえもわかっていない。


 だけど、コウに対して、嫉妬心を持ったのは確かで、それは、コウに茅乃をとられたくないから。


 それって、つまり―――…